東京×国分寺
Posted on 2012.11.19
written by 長谷川繊維

東京育ちだ、と言う事に少しだけ抵抗がある。
よく、適度に近いとむしろ行かないと言うが、国分寺で生まれ育った僕は、昔から電車が(特に中央線が)大嫌いだったこともあり、専ら自転車で行ける範囲…国分寺~立川間主な生活圏だった。
本当の事を言うと、大学に入るまで新宿から向こうには稀にしか行った覚えがない。誇張ではなく人生の殆どをこの狭い空間で生きてきている。
だから、大学進学で上京してきた人と話すと自分の方が東京の街を知らなかったりして焦ることがある。

実際、国分寺という駅自体はそこそこ知られているだろうけれども、おりて遊んだりする人となると殆どいないんじゃないだろうか。
中央線には三つの~寺という街があり、東側から高円寺、吉祥寺、国分寺。この中にヒエラルキーがあるとしたら国分寺は確実に底辺だろう。都市部に近くも遠くもない国分寺にはこれといったアイデンティティがない。ダサくて垢抜けてないが、かといって地元愛やマイノリティの面白みもない。そして、自分が語れる『東京』はこの国分寺についての記憶が全てである。

小学生の頃はよく近所の雑木林で遊んだ。物が無いなりに色々な遊びを考えたが、中でも地下秘密基地は鮮明に記憶に残っている。
数人がかりで深い縦穴を掘り、送電線用リール(と言って伝わるだろうか?木製で直径1.5mくらいのミシンの下糸ボビンみたいなもの)をどっかから拾ってきて、片板を外して蓋にし、土を被せてカモフラージュした。板は丈夫で、上に人が乗っても問題なかった。詰めれば子供が二人入れたのだから結構な大きさだったが、基地として小さい事には変わりなかったので、地下は緊急避難用(何から避難するのか知らないけれど)ということになり、本部は別だったと思う。それで終わってたら、ZONEのあの歌のように最高の思い出で終わっていたのだけれど。

程なくして誰かがエロ本を拾ってきた。インターネットの普及していない時代、住宅地にある林周辺はエロの吹き溜まりだった。
付近の住民達が夜な夜な維持できなくなったコレクションたちを捨てにくる。

とにかく僕等は初めてのエロとの遭遇に夢中になり、銀玉鉄砲遊びをやめて基地で読みふけった。思い出すほど、ただ不潔で気持ち悪いだけの光景なんだが、あの複数人でひたすら悶々とするだけの、プラトニックなエロが成立したのはこの時期だけかと思うと、今は懐かしくてしょうがない。日が落ちてくると僕らは総意でいらないエロ本を決め、火をつける。それほどにエロ本はあった。インクの中には時々青緑に燃えるものがあって、チラチラと混ざりあう火の色が印象的だった。

基地ごっこの終わりはその後すぐだった。一人がエロ本を隠して自宅に持ち帰った。そして親にバレた。
すぐさま全員の宅に凄い剣幕の電話が回ってきたのだから、彼がチョイスしたのはコレクションの中でもよほどキワドイものだったのだと思う。
結局基地は破壊を命じられ、ヤケクソになった僕らは近隣のポストにコレクションを投函して回った。

最近、一週間くらいパリを旅行してきた。
美術の勉強が一番の目的だったのだけれど、3日目にしておしゃれアレルギーを発症してしまった僕は、パリの西に位置するブローニュの森で動物の観察をしていた。

しばらく暇を満喫しているうち、僕はふと子供の頃を思い出して、何か下劣極まりないものが落ちてないかとワクワクし始めた。

パリという街はどこまでもカフェやブティックが立ち並んでいて、立川駅みたく個室ビデオ店の大きな看板が不特定多数に向けてぶら下がってたりはしない。
汚いところはある。ただ、地下鉄のスプレーペイントは律儀にも駅間のトンネルまでくまなく描き込まれ、地面には丹念にガムが吐き捨てられている。
結局、市民革命を成し遂げた彼らの「不潔さ」は、反骨精神に由来する、いわば「主義」としての汚さなのだと思う。
人目をはばかり、それでも内からの欲求を押さえきれずに暴露してしまい、目を伏せてそそくさと立ち去るような、そういう汚さとは違う。どこまでもオシャレな仮面の街。人間だもの、生きていれば隠したい行為もあるだろう。街は人間そのものであるべきだ。僕は人間がみたかった。

そして、ようやく森の中で見つけた使用済みのコンドームが一つ。
こういうとこでのプレイをフランス語ではアバンチュールとかって言うんだろうか。東京は素敵な街だと思う。

 

(続きます)

長谷川 維雄


1988年8月8日生
O型、左利き。

東京芸術大学大学院在学中
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